ライトパワープロジェクトは東海大学チャレンジセンターチームとして2009年10月25日〜31日の7日間、オーストラリアで開催される 「Global Green Challenge」 に参戦します。 「Global Green Challenge」 は1987年から2007年にかけて開催されていた 「World Solar Callenge」 に燃料電池車や電気自動車を加えたもので、22年の歴史を持ち世界中から強豪チームが集う世界最高峰のソーラーカーラリーです。
発進直前のTokai Spirit (2001 World Solar Callenge) |
3000kmに及ぶ縦断ルート |
本大会はオーストラリア北部のダーウィンをスタートし、大陸を南下しながらアリススプリングスなどを経て南オーストラリア州の州都アデレードを目指します。 2009年大会は、オランダのデルフト工科大、アメリカのミシガン大、マサチューセッツ工科大、スタンフォード大、イギリスのケンブリッジ大、オーストラリアのオーロラなど全世界から38チームが出場する予定です。
Team | Country | Team | Country |
---|---|---|---|
Heliodet | Germany | FH Bochum | Germany |
University of Cambridge | United Kingdom | Durham University | United Kingdom |
Umicore Solar Team | Belgium | Sakarya University | Turkey |
Delft University of Technology | Netherlands | University of Twente | Netherlands |
Osaka Sangyo University | Japan | Aurora Vehicle Association Inc | Australia |
Massachusetts Institute of Technology | United States | Stanford University | United States |
University of Michigan | United States | Principia College | United States |
本大会への出場によって、単に速さを競うだけでなく、ラリーを通して太陽エネルギー利用技術を世界に発信し、人々の環境への関心を高められると考えられます。 また、世界各国から集まった大学チームなどと知識や技術を互いに交換しあうとともに、過酷なラリー体験を共有することで交流を深めます。
新型ソーラーカー 「Tokai Challenger」 | ソーラーカーを操縦する篠塚建次郎氏 |
ライトパワープロジェクトは環境エネルギー技術の大決戦ともいえる本大会のために新型高性能ソーラーカー「Tokai Challenger」 を設計・製作しました。 現在ものつくり館では 「Tokai Challenger」 をより効率よく運用するために、試験走行での結果を基に最後の調整が行われています。 また、昨年南アフリカ共和国で行われた FIA公認「South African Solar Challenge」 に引き続き、特別アドバイザーとして世界的ラリードライバーである篠塚建次郎氏を迎え、走行距離3000kmを超える過酷なラリーで私たちは世界一を目指します。
2009年10月17日(土) 東海大学ソーラーカーチームの本隊が Global Green Challenge に出場するために成田空港を出発し、ケアンズを経由してダーウィンに到着、先に現地入りしていた先発隊と合流しました。 空港に到着したメンバーは日本からの長旅ということもあり、少々疲れた様子でしたがオーストラリアに来たという実感がわいている様でした。
ダーウィン空港に到着 | トレーニングルームに車体を搬入 |
空港到着後、豪州トヨタのダーウィンオフィスへ移動しサポートカーとなるプリウス、タラゴ(エスティマ)、ランドクルーザーを引き取りました。 更にダーウィンオフィスのトレーニングルームを車体整備のために借りられることとなりソーラーカーや部品、工具などを搬入し早速作業にかかりました。
車体の整備を行う | 夕食を取るメンバー |
明日予定されている太陽電池の発電チェックなどを行うためにバッテリーの組み立てや車体の整備を行いました。 また、夕方からはソーラーカーとともに3000kmを走るサポートカーに無線機や衛星電話などを設置しました。 大会まで残りわずかな時間ですが良い成績を残せるように車体の整備を進めて行きたいと思います。
バッテリの組み立て | サポートカーの整備 |
午前中は本日の予定を確認し太陽電池の発電チェックの準備を行いました。 また午後には、ラリードライバ篠塚建次郎氏がダーウィン空港に到着しオーストラリア遠征メンバと合流しました。 メンバと合流後、車体の整備状況等の確認を行いました。 夕方には予定していた発電チェックを行いましたが、夕方6時過ぎで発電量が少なく満足なテストは行えませんでした。 しかし、ソーラーカー充電台などにまだまだ調整の必要な箇所を見つけ出すことができた点は良かったと思います。
篠塚建次郎氏ダーウィン空港到着 | 太陽電池発電チェック |
昨日日が暮れてしまい行えなかった発電テストを午前8時30分過ぎから行いました。 発電テストを行った結果、電気系以外にも充電開始までの段取が習練不足で時間がかかり過ぎることが解りました。 本選ではソーラーカー停車後素早く発電に移り、少しでも多く蓄電することが要求されるので発電準備時間の短縮は今後の大きな課題です。 発電テスト終了後、午後から予定されていた公道車検を受けるためにバックミラーやウィンカーなどの準備を行いました。 公道車検とは大会出場のための車検ではなく、一般道の決められた区間を試験走行などで利用するための車検です。
太陽電池発電テスト | 公道車検準備 |
15時30分過ぎから車検員を豪州トヨタ・ダーウィンオフィスに招き公道車検を受けました。 車検ではウィンカー燈、ブレーキ燈、後方確認用ミラー、ブレーキの効き具合などを一般道を走る上で支障が無いか確認します。 英語での対応のため少し戸惑った事もありましたが無事に車検に合格することができました。
公道車検の様子 | 車検認定証 |
今日は公道での練習走行の予定でしたが出発前の最終確認で発電系統のトラブルが発覚し、復旧を試みるも結局練習走行はできませんでした。 夕方からはコントロールストップなどソーラーカー停車時における動きをシミュレーションしオーストラリア大陸縦断3000kmに備えました。
練習走行目前で発電系統のトラブルが発覚 | MPPT周辺の修復 |
コントロールストップでの各自の動きを確認 | サポートカーにTウェーブを貼る |
発電系統のトラブルはなんとか解決でき、昨日予定していた練習走行を行いました。 本番同様ソーラーカーの前に先導車、後ろに司令車・伴走車・トラックなどを配置し各自の役割を再確認するとともに車体の走行データを取りました。 気温30度を超える中、本選で搭乗する4人のドライバーはそれぞれ巧みにソーラーカーを操りダーウィンの暑さに負けない力強さを見せました。
公道での練習走行準備 | 練習走行するTokai Challenger |
新型ソーラーカー 「Tokai Challenger」 はグローバルグリーンチャレンジの大会公式車検に合格しました。 早速明日24日にHidden Valley Circuitで予選が行われます。
補器類の確認 | 車重の計測 |
ダーウィンのHidden Valley CircuitでGlobal Green Challengeの予選が行われました。 明日の本選では予選での周回タイムの速いチームから順次スタートとなります。 東海大学チームは世界的ラリードライバの篠塚建次郎氏がステアリングを握りサーキットを2分7秒で走りぬけ、4位通過となりました。
予選中のTokai Challenger | 予選に挑む篠塚建次郎氏 |
いよいよ今日からオーストラリア大陸3000kmを縦断するグローバルグリーンチャレンジ本戦です。 ノーザンテリトリー州の州都ダーウィンを昨日の予選での順位に従って8:30から各車一分毎にスタートします。
ダーウィンを発つTokai Challenger | オーロラ Aurora101 |
東海大学チームは、オーロラのAurora101(豪)、デルフト工科大学(Nuon)のNuna5(蘭)、ボーフム大学のBoCruiser(独)に続いて8:33分に走行開始。 スタート直後Nuna5がMPPTのトラブルに見舞われ停車、Aurora101も何らかのトラブルによってリタイアしたため、Tokai Challengerは一気にトップへ躍り出ました。
ミシガン大学 Infinium | Nuon Nuna5 |
Tokai Challengerは大きなトラブルも無く順調に走行を続け、キャサリン、ダンマラと2つのコントロールストップ(必ず経由して30分間停車しなければならない場所)全てをトップで通過、17:38にダーウィンから808kmの地点で停車し初日の走行を終えました。
ダンマラでミシガン大学チームと 並んで充電中 |
本日のキャンプ地 |
ソーラーカーレースの朝は甲羅干しから始まります。 レース時間である8時から17時までの発電に加えて、走行前は朝日が昇るときからレース終了後は日が沈むまで、太陽に向かってソーラーパネルを傾け少しでも多くの電力を得ます。 本日はレース前までに120Wh程の電力量をバッテリに蓄えることができました。
甲羅干し |
8:08にキャンプ地を発ったTokai Challengerは3つ目のコントロールストップとなるテナントクリークに10:05ごろ到着。 Tokai Challengerはその後も順調に走行を続け、12:54にはバロークリーク、16:04にはアリススプリングスを一位で通過しました。
テスラモータースの電気自動車 | コントロールポイント アリススプリングス |
ダーウィンから1500kmほど離れたコントロールストップであるアリススプリングスを26日のうちに通過できたのはTokai Challengerのみでした(コントロールストップは17時で閉場する)。 結局この日はアリススプリングスから30kmの地点で走行終了、総走行距離1531kmで残す道程は半分です。
カンガルー注意 | キヤトルグリッドを超えるTokai Challenger 牛が逃げないように道路に仕込んだ溝 |
太陽光発電にとって天候は極めて重要で、特にオーストラリア大陸を縦断するグローバルグリーンチャレンジではサーキットと違い100km以上先の空模様を考えながらソーラーカーを運用しなければなりません。 東海大学チャレンジセンターチームはMTSAT-1R (気象衛星ひまわり) が撮影したオーストラリアの最新画像を1時間に1回東海大学情報技術センター/宇宙情報センターから取得しエネルギーマネージメントに役立てています。 問題は大陸中央部の砂漠地帯でいかにしてオーストラリアの最新画像を入手するのかということですが、東海大学チームはサポートカーに衛星を自動追尾するインマルサットBGAN EXPLORER 727を装備して走りながらにインターネットコネクションを張ることができます。
オーストラリアの衛星写真 | インマルサットBGAN EXPLORER 727など |
さて今日は5:00にアリススプリングス郊外のホテルを出発し5:30頃から発電準備を開始。 昨日いくらか余裕を持って走ったため朝の充電でバッテリを満充電にすることができました。 8:00スタート、10:30にはいよいよ州境を越えてサウスオーストラリア州に入りました。 ノーザンテリトリ州では最高速度が130km制限でしたがここからは110km制限となります。
州境を越える | 遠くに見える白い山はオパールを掘った跡 |
Tokai Challengerは大きなトラブルも無く順調に距離を重ね14:10にはオパール鉱山跡で有名なクーバーペディに到着、更に252km先にあるグレンダンボを目指します。 グレンダンボ到着は17:07でコントロールストップは閉まっていたため、入り口3m手前で停車。 明日走り出した直後にコントロールストップに入ることとなります。
高速走行中 | もう3m進めばコントロールポイント |
大会四日目の今日はグレンダンボのコントロールストップ3m手前からスタート。 すぐさま30分の停車なので実質朝の甲羅干しが半時間伸びたとも取れます。 8:41にグレンダンボを発ったTokai Challengerは11:21、九つ目のコントロールストップであるポートオーガスタに到着。 遂に大陸を抜けダーウィン以来の海を臨みます。
タイヤ交換 | 発電は1900Wを超えることも |
残すはアデレード手前の計時終了コントロールストップのみ。 ポートオーガスタから108kmの橋上で左前輪がパンクするトラブルがありましたが難なくリペアしいよいよアデレードへ。 14:39、Tokai Challengerは観客や地元メディアで溢れかえる10番目のコントロールストップに到着。 東海大学ソーラーカーチームはグローバルグリーンチャレンジのソーラーカー部門であるワールドソーラーチャレンジで見事優勝を決めました。
最後のコントロールポイント・計時点 に入るTokai Challenger |
Nuonの音楽隊と |
コックピットからの降り際に 報道陣に手を振る篠塚建次郎氏 |
昨日はゴール地点であるアデレード・ビクトリアスクエアの準備ができていなかったため、計時地点での停車となりました。 従って今日はアデレード郊外の最後のコントロールストップから市街地のビクトリアスクエアまで20km走行しフィニッシュラインに到達しました。
後続のチームも続々とビクトリアスクエアに到着し、広場では大陸を縦断した様々なソーラーカーが展示されています。 夜には表彰式が行われました。