2007年3月22日(木)15時00分より、東海大学湘南校舎松前記念館講堂において、現代GPシンポジウム「USR−社会貢献を通じた大学と社会の新たな連携」を開催し、140名【学外者28名(他大学・高校・企業・行政)、学内教職員87名、学生25名】の方々に参加していただきました。
日時 : 2007年 3月22日(木) 15:00〜17:00
場所 : 東海大学 湘南校舎 松前記念館講堂
プログラム :
■基調講演
「本学の教育と社会貢献を飛躍させるチャレンジセンターの役割」
野 二郎 東海大学学長
■パネルディスカッション
「大学は社会貢献を通じて行政・企業・NPO/NGOとどのような関係を構築すべきか」
(パネリスト)
野 二郎 東海大学学長
金子 信夫 秦野市教育長
神戸 好夫 大日本印刷株式会社CSR推進室長
菅野 啓子 秋田県こどもの日本語ネットワーク事務局長
飯田 恒平 文学部アジア文明学科3年次生
(コーディネータ)
大塚 滋 チャレンジセンター所長
■基調講演
「本学の教育と社会貢献を飛躍させるチャレンジセンターの役割」
高野学長より、本学の「集い力」「挑み力」「成し遂げ力」の育成という教育方針について、また本取組の中心であり、大学の知を開放した産・学・公の「ネットワークの要」となる「チャレンジセンター」の意義と今後の活動について、一年の活動成果を踏まえ以下のような説明がなされました。
『大学の重要な使命として「社会改革への参画」があげられるが、従来のような教員を中心とする社会ニーズに合わせた研究シーズの活用ではなく、これからは「学生」が中心でなければならない。そして、そこでの人材育成は、大学や教職員が持つあらゆる資源を活用して行うべきである。教育改革としては、プロジェクトによる実践学習の推進だけでなく、授業をはじめとした学部改革に結び付けなければならない。それは言うまでもなく、外部評価に耐えられるレベルでなければならない。
社会との連携については、チャレンジセンターを窓口とし、企業のCSR活動を見据えた新たな連携を推進する。学生の活動は、必ずしもすぐに大きな成果に結びつくとは限らないが、短期的なメリットにとらわれず、社会貢献マインドをもった人材を育成して行きたい。』
■パネルディスカッション
「大学は社会貢献を通じて行政・企業・NPO/NGOとどのような関係を構築すべきか」
パネルディスカッションでは、行政・企業・NPOにおいて社会貢献活動に取り組んでいる方々から、今後、大学は教育を通じてどのような社会貢献を果たしていくべきか、その可能性と課題について意見と提言をいただきました。具体的には「大学との社会貢献のあり方について」「社会貢献を通じた大学との連携の可能性について」を伺いました。
秦野市の金子信夫教育長からは、『行政にしても大学にしても「何とかしなければいけないという危機感」が原動力になる。行政と大学の双方がWin−Winの関係でなければならない。行政の中には大きな木になる「種」がたくさんある。チャレンジセンターの今後の活動に期待している』との意見が述べられました。これについて、野二郎学長から、『地域連携から大学が得る恩恵については、長い目でみていく必要があり、地域が大学を育てるという意識をもっていただくことから連携がはじまると思う』との意見が述べられました。
大日本印刷CSR推進室長の神戸好夫氏からは、『学生を中心とした連携で、短期間にすばらしい成果を出すということは難しいが、学生とのかかわりから私たちも「気づき」を得ることが多く、非常に意義があると考えている。それぞれ、企業でしかできないこと、大学でしかできないこと、行政でしかできないことがあり、どこと連携するとよい結果が得られるかを相互に認識しあうことが大切である。学生の場合は4年間で卒業してしまうこともあり、継続性が課題であるが、企業がその受け皿になれるとよいと思う』との意見が述べられました。
実際に本学の学生を受け入れた経験を持つ、秋田県こどもの日本語ネットワーク事務局長の菅野啓子氏からは、『学生の活動を契機に、市民やサポーターの力を結集させるよい機会になった』との報告がなされました。
また、実際にチャレンジセンターのプロジェクトに参加した本学学生の飯田恒平さんからは 、『プロジェクト活動を通じてコミュニケーション能力を高められたとともに、社会的な責任について真剣に考えた経験を通じて、外部の方たちとともに活動するための心構えを学べたことが大きかった。社会に出て壁にあたり、自分の持つ可能性を見いだせない人もいるが、様々な学部の学生や社会人の方たちと活動をしたことで、自分の可能性を見出すことができた。これからは、プロジェクトの連携を推進、発展させていきたい。今日のシンポジウムで、学生の意欲の受け皿が行政や企業や市民団体にあることを再確認でき、学生がもっと主体的にかかわっていくことが大切だと感じた』と活動で得られた気づきや課題について述べられました。
行政・企業・NPO/NGO・学生・大学、それぞれの立場から社会貢献のあり方について意見を伺いました。学生と学外の諸機関との連携については、常に「継続性」が課題となりますが、目に見える成果の追求だけでなく、学生とのかかわりによって「学生教育への参画」と「関わる側も自らの成長の機会である」という、連携に対する位置づけの深まりが感じられました。CSR活動の進展や市民が参加する行政のあり方、大学が行う社会貢献活動について、改めて考えるきっかけとなりました。
チャレンジセンターの開設から一年が経ちますが、開設前と開設後における地域や企業との連携状況について検証し、「教育効果」「連携の成果」の両面から評価体制を整備していく必要があります。今回出席していただいたパネリストの方々からの御意見を参考にしながら、2007年度中には評価体制を構築していきます。
当日のアンケートでは「地域貢献の担い手からの生の声を聴くことができ、継続性への課題が見えた」「大学でいろいろなことを経験することが社会貢献にもなり、人間としての成長になると感じた」などの意見が寄せられました。
今後とも地域と大学が一体となり、教育活動を通じた地域活性を実践していきます。