生い立ちから映画監督として現在に至るまでを、ご自身の経験を振り返りながら、独自の「集い力」「挑み力」「成し遂げ力」観を切り口に熱く語っていただきました。
日時 : 2007年 5月30日(木) 15:00〜17:00
場所 : 東海大学 湘南校舎 松前記念館講堂
プログラム : 映画 『ロボコン』にみる“挑み力”
講師 : 古厩智之[ふるまや・ともゆき](映画監督)
参加者 : 180名(沼津校舎20名含む)
(学生136名、教職員31名、一般13名)
アンケート回答 : 134名
古厩監督には講演の中で、内向的であった自分が好きになれず、そんな自身に向けた嫌悪感を忘れたい衝動から、スクリーンの物語を眺め続けた10代、「自分は何がやりたいのか」を自問し「映画が好きなこと、映画をつくりあげたい」という現在の自分を支え続ける「夢」へと変容していった軌跡についてお話しいただきました。
ユーモラスな語り口の中にも時に心に強く問いかける古厩監督に、学生は徐々に引き込まれ、それぞれがこれからの生き方のヒントを掴み取っていった。
特に印象に残ったのは、自主制作映画が評価され、古厩監督が初めてプロの監督として撮影を行っていたときの話。新人は自分だけという中で、監督として自分のイメージにこだわるあまり、細部にわたって指示を出したため、スタッフの気持ちが徐々に離れていった。そのときプロデューサーから「お前は何をやりたいのか」と問われ、映画に対する思いを再確認。
細かな指示を出さず、スタッフにどうすればよいかを問いかけながら、すべて任せる方針に改めたところ、スタッフに活気が戻っただけでなく、他者から得る様々な気づきにより、自分だけでは想像もできなかったようなすばらしいシーンが次々に出来上がった。 古厩監督はこのとき、How toよりもWhat toが大切、自分には「挑み力」「成し遂げ力」はあったが、「集い力」はなかったと振り返ったそうです。
■参加した学生からは次のような感想が寄せられた
監督は最後に「まず、自分の好きなことをみつけてください。」と学生に語りかけた。「集い力・挑み力・成し遂げ力は、確かに大切な生きる力です。けれども、まず、その力を注ぎこむ目的や夢がみんなの中になければ、この力の威力は発揮されないと思います。」という監督の言葉に、参加者は思いを新たにしたようであった。
今回の講演では、「自分一人で出来ることには限りがある。目的を達成したいならば、他者の存在を認めることが大切である」という講演内容と、本学の教育方針である「集い力」「挑み力」「成し遂げ力」を関連付けることができた。これは本取組の意義を学生に分かりやすく浸透させ、学生が他者と協力して様々な活動に参加する意欲を高めることに大変有効であった。
今後もこうしたセミナーを企画するとともに、大学が学生に伝えたいことを講演内容に反映させる過程を授業の改革にも役立てる。
【 経 歴 】
1968年11月14日 長野県生まれ。映画監督。
古厩氏は、大学在学中の1992年に撮影した自主制作の短編映画「灼熱のドッジボール」で、ぴあフィルムフェスティバルのグランプリを受賞することにより、劇場公開用長編映画を撮影できるスカラシップ権を獲得し、1994年に劇場映画デビュー作「この窓は君のもの」を監督。2001年に「まぶだち」でロッテルダム国際映画祭のグランプリと国際批評家連盟賞のダブル受賞を果たした後、2003年に「ロボコン」が、東宝系にて全国公開されました。最新作の「さよならみどりちゃん」では、フランスのナント三大陸国際映画祭で準グランプリを授賞するなど国内外で高い評価を得ています。